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それらすべて愛しき日々

著者/ 宮本れん

イラスト/ 羽柴みず

タグ: シリアス 思い込み 社会人 30代 意地っ張り 白衣 黒髪 エッチふつう 上流階級

時間をかけた丁寧な診療を旨とする整形外科医・黒崎裕哉は、離島から都会の総合病院への異動初日、エリート医師の香月信司と出会う。効率を重視し同時に多数の患者と向き合う信司の診療方針は、裕哉には理解し難かった。事あるごとに対立するふたりだったが、ある事件をきっかけに互いを認め惹かれ合う。そんな中、多忙を極める裕哉に再び離島の診療所に戻らないかというオファーが! 仕事と恋の狭間で揺れる裕哉が導き出した答えは…!?


「俺だけに、見せてくれるんだよね」
 こつんと額を合わせ、至近距離で覗きこむ。
 子供のような独占欲が微笑ましかったのか、信司も小さく笑ってそれに応えた。
「そうだな」
 滲み出す色香に呼吸を忘れる。これからこの人を自分のものにすると思うだけでどうしようもなく熱くなった。
 わずかに身体を離し、両手で頬を包みこむ。顔を近づけて行くと、長い睫毛がふるりと震えた後で瞼が落ちるのが見て取れた。
 宝物にするように、大切に大切にくちづける。唇は熱によって次第に熟れ、花が綻ぶようにふわりと開いた。そこから舌を差し挿れ、甘い蜜に飢えた蜜蜂のように口内をくまなく舐め辿る。そうして唾液を混ぜ合わせていると快感と背徳までもが混ざり合っていくようだった。
「……ん、…っ」
 ねだるような声が鼻孔から抜ける。それを聞いただけで身体が疼くのが自分でもわかった。
 さらに深く貪り、逃げを打つ舌を追いかける。うっすらと開いた彼の瞳に情欲が滲んでいるのを見つけた瞬間、一気に血が漲った。
 獰猛な雄の顔つきで欲情を煽る裕哉に、信司もまた高まってゆく。このままぐずぐずに溶けてしまいそうなほど気持ちよくてしかたなかった。
 熱い昂ぶりに彼も気づいているだろう。信司の熱も同じところで感じる。今すぐにでも貪り尽くしたい雄の性を抑え、裕哉は唾液に濡れる唇を一舐めした。
「このまま、あんたの全部をもらってもいい? 後悔しないね?」
 信司は濡れた瞳で残らず攫って行けと語る。
「覚悟がなければ家に上げたりしない」
「……わかった。ありがとう」
 もう一度唇にキスを落とすと、信司の肩を抱いて寝室へと案内してもらう。後ろ手にドアを閉めるなりそのままベッドに縺れこんだ。
 ふたり分の重みにスプリングが軋み、肌触りのいいシーツに皺が寄る。その真ん中に恋人を縫い留め、くり返しくり返しキスを落とした。
 少しでも離れているのがもったいない。境界線さえ暈したい。あふれる想いを注ぎこもうと裕哉は執拗に唇を求めた。
「……ふ、…ぁ、っ」
 息継ぎの時間さえ惜しい。彼の熱い吐息ごと全部奪ってしまいたい。
「香月さん……」
 寝衣を脱がせベッド下に放る。外気の冷たさに驚いたのか、信司がわずかに身を震わせた。
「すぐに熱くなるよ」
 そう言って滑らかな素肌に手を這わす。こうした経験が薄いのか、あるいははじめてなのか───信司は戸惑いを隠そうともせず、腰を捻って逃れようとする。
 己を律することに長けた人だ、愛欲に溺れたことなどないだろう。そんな彼をこれから自分が開くのだと思うとそれだけで上り詰めてしまいそうだった。
 自身が脈打つたび、熱をわけ与えるように何度もくちづける。首筋、鎖骨、二の腕と探って行くうちに肌は熱を孕み、汗ばんでいった。
 火照る身体を持てあまし、信司はうろうろと視線をさまよわせる。いつもとはまるで違う頼りない視線に支配欲を掻き立てられながら、裕哉はそっと彼の前髪を掻き上げた。
「大丈夫。余計なことなんて考えられなくしてあげる」
「黒崎」
「俺のことだけ感じていて」
 耳元で、わざと低く囁いてやる。かたくなりはじめていた胸の尖りに触れると、信司は驚いて背を撓らせた。
「……っ」
 反射的に逃れようとするのを制し、そのまま指の腹で転がす。捏ね回すように弄ると、受け取った快感の強さを見せつけるように信司の肩がビクビクと跳ねた。
 先端は徐々に赤く色づき、ぷっくりと立ち上がってさらなる愛撫を求めはじめる。信司は息を吹きかけただけでも小さく呻き、その表情をより一層艶めかしいものにした。凛々しい眉は苦悶に歪み、噛み締めた唇からも時折り堪え切れぬ吐息が漏れる。そんな痴態を煽るように裕哉は舌を花芽に這わせた。
「……ぁ、あっ」
 たまらずに零れる甘い声。
 信司は慌てて両手で口を覆う。これ以上の醜態を晒すまいと指を噛むのを諫め、裕哉はそっと手を伸ばした。
「だめ。傷になる」
 あやすように頬を撫でる。
「声、我慢しないで。もっと聞かせて……」
 信司の手をどけさせ、驚く唇を割って強引に自分の指を含ませた。
「……ん、っ」
 上顎の裏をくすぐってやると、鼻孔から抜ける声が切なげに震える。
「ここ、気持ちいいですか」
「ふ、…、っ」
 執拗に撫で回しているうちに信司の口端からは唾液が伝う。愛撫を甘受する眼差しはとろりと蕩け、身体が快楽に小刻みに震えているのがわかった。
「色っぽい。香月さん」
 裕哉は舌も露わに甘い蜜を舐め上げる。
「黒…、さ、き」
 指を咥えたまま名を呼ばれると被虐心さえ芽生えてしまい、自分でさえ知らなかった己の中の感情に惑乱した。
「あんたはもう……。どんだけ俺を煽るのがうまいんですか」

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