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Mに堕ちる シリーズ 3

エゴイスティックな夜は甘く

~Mに堕ちる 3~

著者/ 伊郷ルウ

イラスト/ 桜井りょう

タグ: シリアス 社会人 義兄弟 SM オレ様 スーツ メガネ 強気 白衣 エッチ痛め 凌辱 研究室 緊縛

「好きになるのに理由など必要ない」。薬品会社の社長の息子・雅彦は、一夜限りの相手・幸司と関係をもつ。しかし幸司は雅彦の取引先の研究室の院生で、さらに妹と幸司の兄が結婚する!? 義理の兄弟となった二人は背徳的な関係からやがて互いに好意を抱き…。


 シャツのボタンを外し始めると、雅彦は机の前からキャスターつきの椅子を引き出し、片手で転がしてきた。
 一メートルほどの距離を取って椅子に座り、見学者よろしくどっかりと背もたれに寄りかかって脚を組んだ。
「幸司さんの潔さは、見ていて気持ちがいいですね」
 新たなタバコに火をつけた雅彦は、さも楽しげに笑っている。
「勝手にほざいてろっ」
 ストリップをさせられる身の幸司は、ボタンを外し終えたシャツを放り投げ、憎々しげに睨み付けた。
 一部始終を見られるだけでも、かなり恥ずかしいのに、あろうことかすでに興奮状態にある身体を見せなければならない。
 踏ん切りをつけてシャツに続き、ジーンズと脱ぎ捨てていったが、さすがに下着を脱ごうというときには、躊躇いに手の動きが鈍った。
 ほんの一瞬の躊躇いを雅彦は見逃さなかったようだ。
「いまさら最後の一枚を恥ずかしがってどうするんですか?」
 雅彦にククッと小さく笑われ、腹立ち紛れにトランクスを脱ぎ捨てる。
 露わになった股間では、触れてもいないのに熱を帯びた中心が、期待に満ち満ちて揺れている。
 自然とそこに注がれた雅彦の視線に、股間を隠したい思いに捉われたが、幸司は脇に垂らした両手をギュッと握りしめ、必死にその衝動を堪えた。
 そんなことをすれば、裸でいる自分が惨めになる気がしたからだ。
 ひとしきり舐めるように裸を眺めたあと、ようやく椅子から立ち上がった雅彦は、吸いかけのタバコをテーブルの上に載った灰皿でもみ消した。
 再び椅子まで戻った雅彦が、背もたれを掴んでニッコリと微笑んだ。
「では、こちらへどうぞ」
 座面はこちらに向けられ、雅彦はあきらかにここに座れと言っている。
 裸で椅子に? 当然の疑問に、幸司は足が動かなかった。
「な……」
 その場に立ちつくしていると、雅彦が手を握り取って軽く引いた。
「椅子は座るものですよ。さあ、座ってください」
 なにをする気だと聞く間もなく、椅子にトンと座らされた。
 明るい部屋の中で、裸のまま椅子に座るのは、とてつもなく羞恥心を煽られる。それなのに、これからなにかが始まると思うと、どんどん身体は火照っていった。
「楽しみ方はいろいろあるのですよ。いくつか試して、幸司さんのお気に入りを見つけましょう」
 そんなことを言いながら、雅彦はネクタイを片手でシュルリと引き抜いた。
 自分を戒めるための道具の、その乾いた小さな音にすら、身体はもののみごとに反応し、あちらこちらがムズムズしてくる。
「うっ………」
 背もたれの後ろに回した両手を、いとも容易く縛り上げられた。
 雅彦が離れた気配を感じ、試しに手を動かしてみると、わずかに肩が動くだけで、両の手首はびくともしない。
 実際に確認することはできないが、手首を縛ったネクタイの先が、背もたれを支えるポールに結びつけられているようだ。
「きつかったら言ってください」
 優しげな言葉を投げかけた雅彦を見上げると、その首には長めの革ベルトが二本ほどかけられていた。
 幅にして五センチくらいで、長さは紳士物のよくあるベルトと同じで、一メートルあるかないかだろう。
 初めて目にした道具に、幸司が真っ先に思い描いたのは、裸で鞭打たれる自分の姿だ。味わったことのない痛みに恐怖を覚えたが、両手を拘束されていては逃げようもない。
 顔に浮かんだ恐怖を見て取ったのか、雅彦は首から下げたベルトの両端を掴み、ピンと張って見せた。
「これで叩いたりはしませんよ」
 そう言って笑った雅彦は、剥き出しの片足を持ち上げて肘掛けに乗せると、一本のベルトで動かないように固定してしまった。
 嘘だろ……焦りが走る。
 雅彦がこの次になにをするかは容易に想像できる。両足をこの状態で拘束されてはたまらない。
「やめろ、こんな……」
 抵抗の言葉も虚しく、あっという間に、もう片方の足も同じように固定された。
「いい眺めですね」
 一歩下がって両腕を組んだ雅彦は、満足そうに笑っている。
 幸司は素っ裸で椅子に座らされて後ろ手に縛られたあげく、両足を大きく開く格好で固定され、股間の奥の奥までを晒す羽目になったのだ。
 隅々まで舐め尽くすような雅彦の視線に、幸司の瞳から涙が溢れてきた。
 自分の姿は見えないが、どれだけ淫らな格好かは鏡を見るまでもないし、雅彦の仕打ちはこれで終わったわけではない。
 なぜ自分はこんなことをしているのか? どうしてここまで従順になれるのか? 自問自答したところで、出る答えは一つしかない。
 雅彦が与えてくれる、あの快感が忘れられないのだ。
 不意打ちという形で陵辱されたのがきっかけで、知り得なかった性癖が呼び覚まされた。麻薬にも似た快楽の世界は、一度でも味わってしまえば後戻りは難しい。
 雅彦と会わなければ知らずにすんだかもしれない、己の隠された一面。できれば、知らずにいたかったと今でも思う。
 淫らな世界へと引きずり込み、自分の身体を制御不能にしてしまった雅彦を、心の底から憎んでいるのに、拒絶することも、抗うこともできない。
 貪欲に求め、熱く燃えさかる身体を満足させてくれるのは雅彦であり、その快感は後悔をしてでも得たいほど魅力的なのだ。
 キャンパスで雅彦に会っただけで、身体の芯がジクジクと疼いた。そうなってしまえば、淫らな身体はただひたすら雅彦を求める。
 誘いの言葉を向けられてその気になり、のこのこと訪ねてきたのは、自分の意思だったはず。
 自ら望んでこの部屋に来たとはいえ、予想だにしなかった扱いには、恥ずかしさと悔しさがない交ぜになり、涙が止まらなかった。

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