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快楽の檻

著者/ 吉田珠姫

イラスト/ Ciel

タグ: シリアス 三角関係 契約 やんちゃ オレ様 スーツ 強気 アート エッチふつう 住み込み

アルバイト中の裕斗をモデルにスカウトしたカリスマネイリスト・獅子堂。無事にネイル大会を終えた裕斗たちだったが、獅子堂は仕事でハリウッドへ行ってしまう。ひとり日本に残された裕斗に、獅子堂の義兄でネイル業界を牛耳る興津グループの興津卓真が迫る!


 裕斗のほうは、声も出なかった。
 いや、出たとしても、誰かに助けを求めるわけにはいかない。男にさわられているなどと、恥ずかしくて言えるわけがない。
 ふいに、
「おじさんのこと、怖いのかなぁ?」
 耳に響いたその声で、全身の毛がゾゾッと逆立った。
 いやらしい。ぬめぬめとからみつくような声だ。
 なぜこれほど怯えてしまっているのか自分でも不思議だったが、裕斗は、反論することも、その手を払い除けることもできなかった。
「かわいいねぇ」
 生臭い息を首筋に吹き掛けながら、男は囁く。
「ぼうやみたいな子はね、男の人をすごぉく惹きつけるんだよ? 知ってたかな?」
 猫撫で声がさらに不快感を煽る。気持ち悪くて吐きそうだ。
 しかし、いくら電車の走行音でかき消されるといっても、これだけの混みようだ。痴漢の声が聞こえている人間もいるだろう。なのにどうして誰も救けてくれないのか。
 それとも、太った男が覆いかぶさるようにしゃべっているから、声はまわりに届いていないのだろうか。
 痴漢の手が、不吉な動き方をした。
 前のほうにまわってきたのだ。
「……あ…ッ……」
 なにをされるか察して、その手を必死に押さえたのだが。さわったなまぬるいグローブ
のような感触に、思わず手を緩めてしまった。
 そこをつかれた。痴漢の手は、素早くジッパーを下ろしていた。
(やめろよっ、ばかやろうっ)
 でかいくせに迅速な動きで、気持ちの悪いものがパンツの中に潜り込んでくる。
「………い………」
 身をすくめ、湧き起こる怖気に耐えた。
 視界のすべてが無機質な銀色の壁で、…だからよけい意識が途切れてしまいそうだった。あまりにも現実感がなくて。
 ふと、耳が変な音を聞く。
 パチン、パチン。
 痴漢が下着のゴムを弾いて遊んでいるのだとわかった時、悔し涙が滲んできた。
(……この野郎っ、ふざけやがって…!)
 なのに、指はするりとゴムを通り過ぎ、
「……あッ……つ……」
 必死に悲鳴を抑え込んだが、かすかに洩れてしまった。
 不気味な触手のような手が、ペニスにからみついている。
「ひ……!」
 腰のほうからも、もう一本の触手が滑り込んできた。それは尻の割れ目を伝い、一直線に肛孔を狙ってきた。
 裕斗はパクパクと口を開け、なんとか空気を吸い込んだ。
 まさか白昼の電車内で、こんなことをされるとは。
 頭の中が真っ白で、されるがままだ。
 蕾の襞をまさぐったかと思うと、探りを入れるように一本の指が入ってきた。
(あ、あう…ッ……!)
 のけぞった。連日の淫交で、裕斗の蕾は受け入れやすくなっているのだ。
 指を入れた痴漢のほうも、少々驚いている様子だった。
「びっくりしたな。男を知ってるんだね? それも、こんなに濡れ濡れだってことは、さっきまで銜え込んでたのかな?」
 どれどれ、とつぶやきながら、肉のついた太い指で、無遠慮に裕斗の腸壁を擦りあげていく。
 喘ぎ声を堪えるのが精一杯だった。
 満員電車の中で見ず知らずの男に痴漢行為をされているという異常な事実が、裕斗から思考能力を根こそぎ奪っていくようだった。
 それでも、翔んでいってしまいそうな意識を懸命に繋ぎ止め、耳を澄ませた。
(……今、……どこだよ……? この電車、どこらへん走ってるんだよ…?)
 自分は急行に乗ったのだろうか。各駅停車に乗ったのだろうか。そんなことすらもう覚えていない。
 たぶん急行なのだと思うが、…時間の感覚さえないのだ。もしかしたら各駅なのかもしれない。だが、どちらにしてもいつかは停車する。その時を狙って逃げるしかない。
 くっくっくっ、とオヤジは堪えきれないように笑った。
「痴漢してこんなに悦ばれたのは初めてだよ。お尻、気持ちよくてしょうがないみたいだね?」
 膝がカクカクと小刻みに震えている。
 立っているのが精一杯だった。
 心は嫌悪感でいっぱいなのに、身体が駄目なのだ。肛孔が淫らに収縮して、男の指を締めつけている。
「ね、次の駅で降りようよ。おじさんも我慢できなくなっちゃった。ここに、おじさんの入れてあげるから。Hなぼうやが悦ぶようなこと、いっぱいしてあげるよ。さっきまで入れてた奴なんかより、もっと気持ちよくしてあげるよ」

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