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極道恋文シリーズ 1

恋文代筆承ります

著者/ 坂東蚕

イラスト/ あびるあびい

タグ: シリアス ヤクザ 大正ロマン 極道 社会人 男前 黒髪 エッチふつう

大正八年。新橋で税理事務所を開いた槙は、副業として恋文の代筆も請け負っている。その宛先のほとんどは、新橋界隈の芸姑や女給たちから絶大な人気の倉田組・三代目だった。ある日、槙は暴漢に襲われたところを偶然、倉田に助けられる。今まで何通も恋文を書いてきた相手である倉田を目の前にして、槙はなぜかずっと恋い焦がれていたような気持ちになってしまい…。


 ドン、ドン、ドンと腹の底まで震わすような深くて重い三段雷。耳をつんざく昇笛付。
 仕掛けのあとに連発、大連発、流し火、金魚と、続けざまに点火され、川岸のお座敷からも拍手があがる。絢爛豪華な和火が次々燃えあがるたび、倉田の精悍な顔立ちに濃い陰影が作り出された。
「……その根付。気に入ったんなら先生にやるよ」
 倉田は槙から煙草入れを貰い受けると根付を外し、再び槙に差し出した。
「いえ、そんな……」
 槙はそんなつもりじゃなかったと、胸の前で手を振った。これほど精巧な造りなら、きっと驚くような値がついているに違いない。
 けれども倉田は槙の手首を掴んで引き寄せ、頑なな掌を開かせる。
「貰ってくれ」
 請うような声で囁いて、掌の真ん中に根付を置いた。
「本当は、もっと何でも先生に買ってやりたい。先生に喜んで欲しいんだ」
 倉田は強ばる槙の指を掌で包んで根付を握らせ、その唇を寄せてきた。
「どういう意味ですか……」
 倉田の唇が指の背に触れ、手の甲を伝って手首に下りる。今、倉田との間に何が起きようとしているのか。槙は震えながら唇の行方を凝視した。
「自分で考えろよ」
 しかし、倉田は窓の止め金を外して窓を塞ぎ、傲然として突き放すだけ。薄闇に紛れた倉田が黒影となり、膝をすすめて迫ってきた。
「……じゃあ、僕の都合のいいように考えますよ?」
 槙は何ひとつ答えようとしない狡い男を睨みあげた。けれど、だったらどうしてこの男に、こんな口づけを許すのか。
 乗り出した倉田に肩で押されて倒されながら、槙は答えを探し続けた。
 倉田の乾いた掌が頬をそっと押し包み、唇を重ね合わせた倉田が唇を吸い、離してはまた口接を深める。懸命に、衝動を制御しようとしているような苦しげな息。口づけたまま槙の肩から衿を落とし、うなじを撫でる唇の熱。
 倉田が答えようとしないのは、きっと逃げ道を作って置くためなのだろう。それなのに、そんな狡さも甘えも許してしまう。流されてしまう自分の弱さを感じていた。
「……抵抗しないのか? 先生」
 身体を起こした倉田が悪どく笑んで、槙の帯を解きにかかる。倉田の衿の合わせも乱れ、隆起した胸板が覗いていた。
「俺の都合のいいように考えるぞ……?」
 薄闇に鋭く響いた衣擦れの音。
 槙の下から手荒く帯を引きぬいて、再び顔を寄せてきた。倉田の目元に乱れた髪がかかっていて、凄絶なほど艶めいている。槙は答える代わりに倉田の肩に手をかけた。
「先生……」
 驚いたような倉田の声が擦れて消える。
 頭をもたげて目を閉じて、倉田に唇を寄せた刹那、ぶつかるように口づけられた。
「倉田、さ……っ」
 さっきまでとはうって変わって口腔深く貪られ、思わず顔を背けると、顎を掴まれ引き戻される。タガが外れたようになった倉田に喉にも胸にも噛みつかれ、そのたび鋭く甘美な痛みが四肢を突き抜けた。
「ん……っ、あっ! あ……っ、ああっ」
 胸の肉を集めるように揉みたてながら乳首に吸いつき、きつく舌で弾かれる。
 倉田の荒い息使い。
 時折確かめるように唇を合わせ、倉田を夢中でかき寄せていると、狂ったように抱き返される。それでも、今この瞬間にどんなに互いに求め合っても、こんな情事はこの場限りの刹那の戯れ。
 倉田には想う相手がいるのだからと、囁く自分を意識の端に感じながら、倉田の愛撫に溺れていた。
「は、……、あっ、も……、う」
 先走りの体液を塗りつけるように性器を扱かれ、途切れ途切れに喘ぎがもれる。思わず畳を這いずりながら逃れても、追いかけるように腿にも腰にも口づけられる。
「あ、……っ、あっ!」
 槙は背中を弓なりにして、甲高い嬌声を迸らせた。襖の向こうに人がいるのに。佐久間を乗せた船が真横にいるのに、淫らな愉悦に惑乱させられ、顔を左右にふり向けた。
 性器を口に含まれて、舌で淫らにくすぐられながら舐めしゃぶられて、一気に高みに追いあげられる。
「だめ、倉田さん、あっ……! 出る……って、あっ、あ……!」

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