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愛と惑いの残り香

著者/ 伊郷ルウ

イラスト/ 吉野ルカ

タグ: すれ違い 切ない 契約 社会人 健気 和服 男前 エッチ薄め 上流階級

月花流宗家の一人息子・葉輔は、華道界の異端児・如月の個展を訪れたが、花の香りを受け付けない体質から、早々に会場を後にする。宗家のライバルのスパイを命じられた葉輔は、如月の元で働くことになるが、部屋に呼ばれ眠っている間に正体がバレてしまい…!?


 舌先を軽く吸われ、差し入れた舌先で口腔の隅々をくすぐられるうちに、葉輔の身体からは強張りが解け、さらには、自ら両腕で如月の背を抱きしめるに至った。
「落ち着きましたか?」
 耳元で囁かれ、葉輔が睫を上げた。
 息も触れあうほどの距離に如月の顔があり、愛しげに見つめる瞳と視線が絡まる。
 なにも怖がることはない。そう言っているような穏やかな瞳に、葉輔はすべてを委ねようと改めて心に決め、再び静かに瞼を閉じた。
 それを合図にしたかのように、如月の手が動きだす。頬を撫でていた手は、そのまま首筋を伝って胸から下腹へと落ちていった。
 だが、そこから先に進もうとはしない。指先と手のひらを使い、柔らかに柔らかに撫で回すだけだ。焦れったくなるほど時間をかけられるうちに、葉輔はすぐその先にある己のものが、じんわりと熱を持ち始めるのを感じた。
 不思議なことに、熱くなったそこに触れてほしくて、放っておかれるのがもどかしくて、勝手に葉輔の腰がゆらゆらと揺らめいた。
「ああっ……ん」
 突然、葉輔の甘ったるい声が響いた。熱を帯びた中心を、如月の手が捕らえたのだ。
「はっ……」
 手のひらで包み込んだそこをキュッと握られ、葉輔の腰がヒクンと跳ねた。あきらかに感じているその顔に、如月の顔が綻んだ。
 葉輔が合意したからといって、身体も同じとは限らない。心と身体は別物だからだ。相手が男だと思えば、葉輔のそこも萎えたままの可能性があった。
 初めての経験なのだから、じっくりと時間をかける必要があると、如月にはそんな思いもあったはずだ。
 それが、何分も経たないうちに、葉輔自身の熱さと硬さを、その手で実感できたのだ。まさに今の如月は、感無量といったところだろう。愛撫を加える彼の手にも、自然と力が入っていった。
 何度か軽く手を往復させただけで、見る間に葉輔自身は張りつめ、そして、熱くなっていく。
「ふ……ぁ……んんっ……」
 自分と同じくらいに弱い部分を心得ている男の手に、葉輔は翻弄され、淫らな声をもらした。
 知らぬ間に透明な蜜が先端から溢れ出し、それを指先ですくい取った如月は、敏感なくびれに沿って塗り込めていく。
 震えるほどの心地よさに、葉輔はたまらず如月にしがみついた。中心はもう熱くてとろけそうになっている。
 それなのに、如月は先端から溢れる蜜で指先を濡らしては、悪戯に張りつめて薄くなった皮を撫で回すのだ。
「んん……くぅ……ああぁ……」
 もれ出る喘ぎ声は抑えようもなく、腰はカクカクと震え、投げ出した足先の指が、もどかしげにキュッと丸くなる。
「イキたいですか?」
 囁きを耳に吹き込まれ、葉輔はプルプルッと頭を振る。
 耳を抜けた如月の甘い声が、下腹にズンと響き、それだけで達してしまいそうだった。
「ふ……ぁあん……」
 もうダメ……早くイカせて……そう言いたいのに、出るのは喘ぎばかりで言葉にならなかった。
「葉輔さん、答えてください」
 意地悪げな声に目を開けると、すぐそこに目元を細め見つめている如月の顔があった。
「もう、限界ですか?」
 問いかけながらも如月は愛撫の手を止めず、今にも昇り詰めそうな葉輔は、必死の形相でコクコクとうなずいた。
 男の手でイカされるなんて……。そんな思いも頭の片隅に残っている。それでも、かつて味わったことのない快感をもたらす愛撫に、葉輔は達することだけしか考えられなかったのだ。
 ニッコリと微笑んだ如月の顔が遠のいていくが、限界がすぐそこに迫っている葉輔は、そんなことにも気づかなかった。
「はっ……う」
 手に取って代わった生暖かい感覚に、葉輔は腰が浮き上がるくらいに大きく背を反らした。
 そのまま手で扱かれるものとばかり思っていた葉輔は、まさか如月が口に納めるとは考えてもいなかったのだ。
 だが驚きは一瞬でしかなかった。ゆっくりと唇が上下に動き始め、舌先が張りつめた中心に絡みつけば、あまりの気持ちよさに葉輔も我を忘れてしまう。

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