表紙_極道にゃんこ

極道恋文シリーズ 2

極道紳士と気まぐれ仔猫

著者/ 坂東蚕

イラスト/ あびるあびい

タグ: シリアス ヤクザ 切ない 大正ロマン 意地っ張り 極道 社会人 男前 黒髪 エッチふつう

時は大正、倉田組若頭の佐久間は豪華客船で催されたカジノパーティで美少年・航と出逢う。初めは自分の地位を利用する打算の持ち主に違いないと警戒するが、触れてみたその素顔は想像以上に純粋で…? インテリヤクザ×負けず嫌いなにゃんこ受けの大正浪漫恋愛譚!


「……今日は動いちゃ駄目なんだ、俺」
「そうだ」
「キスしたくても?」
「……そうだな。キスなら特別に許してやる」
「何だ、それ」
 顔をくしゃりと崩して笑った航を咎めるように口づけて、佐久間もたおやかに微笑んだ。
 本当に愛おしいから大事にしたいと、言葉と身体でこうして伝える。ただそれだけのことが、こんなにも単純なことが単純だからこそできなかった。
 最初に全てを疑うことが生き延びる術だった自分はきっと、人の心の複雑さには堪えられても、航のあまりのわかりやすさが不安で心許なく、堪えられなかったのだろうと佐久間は思う。航が投げかけてきた愛情も、利得を狙った策略としか考えようとしなかった。
 だが、最初から航に嘘がないように、今は自分の中にも嘘がない。
 まっすぐな航が苦しくなるほど愛おしいから慈しみたい。言葉と身体で包み込んで悦ばせ、この腕の中で蕩ける顔が見たかった。
 佐久間は目と目を合わせて引き合うように唇を重ねて身体を起こし、航の両足を抱え直した。
「でも、やっぱり抱きついたら駄目?」
 寂しそうに眉をひそめた航に頭を寄せてやると、細い腕が嬉しげに絡みついてくる。そのまま佐久間は航の尻を手前に引いて膝を進め、航の窄まりに食ませたものを真上からゆっくり沈み込ませた。
「ん、……っ、あっ!」
 一瞬航は顎を突き上げて、佐久間の首に回した腕にも力を込めた。けれど、裸の胸を合わせたまま、互いの粘膜が馴染むまで息を凝らして抱き締めていると、航も徐々に弛緩した。
「……どこか痛くしてないか?」
 佐久間は軽く頭を起こし、航の顔を覗き込んだ。すると、すかさずぎゅっと抱きつかれ、上擦った声で返される。
「も、……いいから、本当に」
 肩に押しつけられた額が汗ばんでいた。佐久間の胴を挟みつける内腿の柔らかさ。首にかかる吐息の熱にも鼓動を煽られ、佐久間も航を抱き返した。
「航……」
 目が合うたびに口づけを重ね、始めは隘路を広げるように腰をゆっくり大きく回す。航はそれだけでしどけなく眉を寄せ、佐久間の二の腕に爪を立てた。
「……あっ、ふ……っ」
 緩やかに引き抜いてから、角度を変えて押し戻す。航の腰骨を両手で支えて抽挿だけをくり返し、切なげな表情を堪能した。
 どこか苦しげにさえ見える眉。
 半開きの濡れた唇。閉じられた目蓋も微かに震えていた。
 その唇にも目蓋にもキスの雨を降らせると、
今度はギリギリまで引き出したもので、一気に奥まで突き上げた。
「ああっ! は……、んんっ!」
 内襞を擦り上げて奥まで押し入り、航が一番乱れる箇所を剛直の先端で擦りたてた。そのたび航は切れ切れに声を上げ、胸を反らしてかぶりを振った。佐久間の腹の下では航の性器が愉悦の雫をひっきりなしに滴らせていた。
 可愛い年下の恋人をもっと熱く悦ばせたい思う反面、佐久間の中では別の欲も膨らみ始める。もっと卑猥によがらせて、喘がせながら縋りつかせて泣かせてみたい。
 いやらしい我儘も無理も聞き入れられ、泣きながらでも抱き寄せられていたかった。
 佐久間が濡れそぼる性器も握って扱きながら、同じリズムで航の奥も突き続けると、濡れたような嬌声が涙声に変わっていた。
「……も、う、……や。や、……だ。これ」
 航がぎゅっと目を閉じたまま、性器を扱く佐久間の手首を掴んで止めさせようとする。けれど、その言葉とは裏腹に、航の身体は奥までとろりと綻んで、佐久間が腰を送り込むたび、佐久間のそれを絞るように締めつけていた。
 だから、本気でやめろと言うのではなく、そんなに急に追い上げるなと怒ったのだろう。
「……休むか? 少し」
 名残惜しい気はしたが、航の性器は離してやった。深く繋がったまま胸を合わせて被さると、荒い息を継ぎながら背中に腕を回してきた。
「佐久間さん、強すぎるから……」
 籠った声でぐずるように言ってから、ぎゅっと佐久間にしがみついた。
「……だから、もっとゆっくりしてくれないと。俺、すぐに終わっちゃうだろ」
 言いながら恥ずかしそうに眉を寄せ、乱れた呼吸を整えている。
「出したかったら出せばいい。……朝まで出しっ放しにしてやるよ」
 脂下がって顔を寄せると、掌で鼻を押し戻された。
「だから、そういうヤラしい顔とかするなよ。もう!」
 くすぐられて怒ったみたいに憮然と顔をしかめている。どうも航は『仕事』でなければ、下世話な会話は苦手のようだ。言葉でこうして煽るたびに、たしなめられている気がした。
「ヤラしいことしているんだから、しょうがねえだろ」
 佐久間は嬉々として頬に吸いついた。もう小休止は終わりとばかりに胸を撫で、小さな乳首を摘んで弄る。
「あっ、……んんっ」
 艶冶な喘ぎに誘い込まれて腰を送り、掌で乳首を転がした。その佐久間の手の甲に掌を重ね、卑猥な愛撫をねだるように、航が胸を反らして啼いた。
「んっ、ふ……、あっ! ああっ」
「……航」
 佐久間は左右の乳首に交互に吸いつき、脇腹を上下にたどって撫でる。航の息が上がるほど、逆巻くように血潮がたぎり、沸騰しそうになっていた。
 再び航の脚を持ち上げて、容赦なく奥を穿ちつけ、華奢な肢体がずり上がるほど揺さぶった。暗闇に包まれた静かな座敷に激しく肉を打ちつける乾いた音が響いていた。
「んっ、……ああっ! あっ、も……っ」
 航に目顔で乞われるたびに唇を重ね、熱い舌を吸い合った。けれども今は甘いキスを交わすより、航を突き上げていたかった。
 航が狂ったように感じる箇所を攻め立てて、泣き喚かせて融かしたい。
 この熱い身体の奥底にぬめった精液を注ぎ込み、航の隅々にまで沁み込ませてしまいたい。
 それらは全て希求のようで祈りのようで、懇願のようでもある気がした。それなのに、ただ凶暴に犯すことしかできずにいると、航の腕が肩に回され、汗で湿った首の裏を愛おしそうに撫でられた。
「……大丈夫か?」
「うん……」
 はにかみながら頷いて、航が頬にキスしてきた。
「大丈夫だから、……もっと来てよ」
 絡めた腕にも切ないぐらいに力を込められ、佐久間は胸を熱くする。擦り寄せられた頬にも耳にもキスを落とし、耳殻をねっとり舐め上げた。

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