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記憶の森

著者/ 松浦巽

イラスト/ 天点

タグ: ミステリー 作品集 エッチふつう

曖昧な記憶を頼りに、かつて自分が神隠しにあった故郷の森を訪れた裕一は、鬱蒼と生い茂る木々の奥に朽ちかけた神社を見つける。通り雨を避けて入った社殿で、謎の男に抱かれる裕一。自分はこの感触を、この男を知っている! けれどいったいどこで!? 幻想的な神隠しの森の秘密を描いた表題作のほか、霊との3P(!?)を描く「幽霊の恋人」も収録されたオカルティック短編集!


「覚えているんだろう? 忘れたなら、思い出せ」
 口づけの合間に、男が耳元で囁く。言葉の意味はわかるが、心の奥にまでは届かない。
 思い出す? 何を?
 シャツをまくりあげられ、胸元に舌を這わされた。乳首を口に含まれ、強く吸われると、甘い痺れが広がった。歯を立てられて思わず声を上げたが、痛みの中には抗いがたい余韻があった。
 覚えている。自分はこの感覚を知っている。
 男の手で体を開かれながら、そのことを確信した。だが思い出せない。いつ、どこでこんなことを経験したのか。この男がだれなのか。
 あちこちを刺激されて、体はすっかり興奮していた。手足の自由は戻っていたが、制止することも思いつかなかった。巧みな愛撫に脳まで溶かされ、記憶どころか思考までおぼつかない。
「あっ……あ!」
 チノパンと下着を下ろされ、濡れた熱いもので股間を包まれた。下腹部全体がぞくぞくして、無意識に身悶えする。深くくわえられたまま、広げた舌でさらに幹を包まれて、おののくように体が震える。
 口から出しながら舐めあげられ、気持ちよさのあまり目眩がした。舌で幹をくすぐられ、頭頂部の下の窪みにそってなぞられる。とがらせた舌先を先端に挿しこむようにされると、強烈な快感に息が詰まり、夢中で手を伸ばして男の髪をつかんだ。
 先端から呑むように口に含まれ、唇で挟まれてしごかれる。
 風雨の叩きつける音と、地響きのような雷鳴。風が強くなるたびに、雨が自分たちのところにまで吹きつけるが、そんなことはもはや気にならない。男の口の中は煮えたぎるように熱く、二人の体もまた、それに負けないほど燃えさかっている。
 ひときわ大きな雷鳴が轟いた瞬間、強くしごかれ、口の中に出してしまった。
 うつぶせにされ、チノパンと下着を足から引きぬかれたかと思うと、臀部の狭間に生温かいものを垂らされる。自分の出したものだとわかった。それを潤滑剤代わりに、男の指があらぬところに侵入してくる。
 さすがに逃げようとしたが、男は見かけによらず強かった。体重をかけて押さえこまれ、さらに指を進められると、それ以上抗う気力もなく、力を抜いて身を任せた。
 日常からかけはなれた状況のせいか、まるで現実感がなかった。性感だけがやけに明瞭で、よけいに夢でも見ているようだった。
 内側をまさぐられて、快と不快の入りまじった衝動に襲われる。もがくとかえって刺激され、呻き声を上げて床に顔を伏せる。
 湿った土埃の臭いがした。
 その臭いに喚起されたのか、ふいに記憶の断片が浮かびあがる。
 板張りの社殿の中。大きな人影が黒々とそびえたっている。隙間からまぶしい光が射しこみ、逆光で相手の顔は見えない。
 早く! 早く逃げなければ!
 落雷の音が空気を裂き、一気に現在へと引きもどされた。
「ま、待って……んっ」
 指が引きぬかれ、代わりに別のものがあてがわれた。それが男の一部だと認識する暇もなく、ぐっと強く押しつけられる。
「あ――」

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